Moonray
ムーンレイ
TNIY-7567 / ¥3,704 + TAX
これが噂のクルーナー、失われた芸術がよみがえる!
前作「マダム・クルーナー」から2年ぶり、コシミハル ニューアルバム。
狂騒の1930年代から40年代、人々の暮らしに夢と希望をもたらしたスタンダード・ソングス。時に刻まれたひと際美しいメロディーで彩られた至高の夢物語。
トミー・ドーシー楽団、グレン・ミラー楽団、アーティ・ショウ楽団などのビッグバンド・ナンバー、フレッド・アステアのミュージカル・ナンバー、そしてジョセフィン・ベーカー、シャルル・トレネ、イヴ・モンタンなどのシャンソンが、トリオ演奏を主軸とした美しく深淵かつヴィンテージな音像で、シネマトグラフのような懐かしさと可憐な響きで蘇る。
* CD/7インチ・サイズ見開き紙ジャケット
* スペシャル・ブックレット付き!(オールカラー24ページ)
ージャズ評論家、瀬川昌久氏によるレビュー
ー舞台演出家、飴屋法水氏の質問表
ーコシミハルの楽曲解説
01. The nearness of you あなたのそばに
Ned Washington / Hoagy Carmichael
02. ‘S wonderful スワンダフル
Ira Gershwin / George Gershwin
03. Skylark スカイラーク
Johnny Mercer / Hoagy Carmichael
04. Qué será será ケ・セラ・セラ
Ray Evans / Jay Livingston
05. A Paris ア・パリ
Francis Lemarque
06. Stetson 7 3/8 ステットソン7 3/8
Miharu Koshi
07. Que reste-t-il de nos amours (I wish you love) 残されし恋には
CharlesTrenet / CharlesTrenet et Léo Chauliac
08. Vous faites partie de moi (I’ve got you under my skin) あなたはしっかり私のもの
Cole poter
09. The way you look tonight 今宵の君は
Dorothy Fields / Jerome Kern
10. I’m getting sentimental over you センチになって
Ned Washington / George Bassman
11. Le marchand de Bonheur 幸福を売る男
Jean-Pierre Calvet / Jean Broussolle
12. Moonray ムーンレイ
Paul Madison et Arthur Quenzer Artie Shaw
13. La mer ラ・メール
Charles Trenet / Charles Trenet et Albert Lasry
レコーディングメンバー:
コシミハル:Piano, Accordéon, Glockenspiel, Metallophone, Palisonoxylophone, Vocoder
参加ミュージシャン:
フェビアン・レザ・パネ(P)
浜口茂外也(Perc)
渡辺等(b)
エリック・ミヤシロ(tp)
今堀恒雄(g)
山口新語(ds)
橋本学(ds)
細野晴臣(perc.mandora)
Produit par Miharu Koshi, 2015
失われた芸術を取り戻すために出現したパフォーマー
瀬川昌久(ジャズ評論家)(ライナーノーツより抜粋)
コシミハルが「マダム・クルーナー」を名乗るアルバムの第2作『Moonray』が完成した。一昨年、彼女が初めてこの名を世に出した時は、一寸した新鮮な驚きだった。というのは、昔から「クルーナー」という呼称は、よく使われてきたが、それは全て男性歌手についてであって、女性歌手を「クルーナー」と呼んだ例はなかったからだ。男性クルーナーがもてはやされたのは、1930~40年代のビッグバンド・シンガー全盛時代で、その最高と目されたのは、ビング・クロスビーであった。参考までに手許にあるOⅩFORDの音楽辞典のCrooningの項をひもといてみると、次のように定義されている。
「ポピュラー歌唱の一つのタイプで、ストレートな唱法から脱してある程度のジャズ的なイントネイションとフレージングを具有し、深く官能的でふるえるような声をのどの底から発し、スライドアップして歌い上げる。この唱法はマイクを効果的に使用することで際立つようになった。Croonの語源は、黒人のソフトでメロウに歌うスラングから来たか、あるいはドイツ語のKrönenに由来する説もある。いずれにしてもクルーニングは偉大な開拓者たるビング・クロスビー亡き後、Lost Art(失われた芸術)になった」。
「マダム・クルーナー」は、この失われた芸術を取り戻すマダムとして今の世に出現したように思われてならない。
コシミハルの多彩な音楽を回顧すると、彼女を真の「マダム・クルーナー」と呼ぶにふさわしい才能が蓄積されていることが実証されるのである。
細野晴臣や上野耕路がいみじくも指摘するように、彼女の音楽は「作家性、即ち音と詩による美の文学的表現」であり、彼女の目指すところは、文学とポップス、作家性とパフォーマンス、日本語とフランス音楽という二律背反の亀裂に、前者の側から橋をかけることであった。その結果、彼女の作品には、ポップス的なメロディー作り、シャンソン的な詩情、ジャズ的な手法によるサウンドやリズムの音作り、クラシック的な安定性のある演唱と演奏、といった多様な音楽性が綜合された。そして2013年の『マダム・クルーナー』に至って、歌手としての新生面が現われて今回の『Moonray』に続いている。
『マダム・クルーナー』の第2作に当たる新アルバム『Moonray』が、彼女の芸術的パフォーマンスの更なる飛躍に繋がることを願って止まない。
2015年8月10日記